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2007年6月

怖い話 真夏の夢・・・?

ある真夏の出来事だった。

その日は雲一つない晴天で、午前中からすでに30℃を超えていた。蝉の声も忙しく聞こえ、道路の照り返しも眩しかった。

わたしはちょっとした野暮用で休暇をとっていた。午前中に用事を済ませ、昼頃にはひとり自宅に戻ってゴロゴロ昼寝を楽しんでいた。

雑誌を読みながら横になっているうち、窓を開けたまま眠ってしまったのだろう。目が覚めるとやけにゾクゾクするし、おまけに薄暗い。もう夜になってしまったのかと時計を見ると、まだ午後2時過ぎだった。

窓の外は真っ黒な雨雲がたちこめて、今にも雨が降りそうだ。遠くで雷の音が聞こえ、夕立ちが来る前の冷たく強い風が吹きはじめていた。

大きな雨粒はすぐに落ちてきた。沸き立つようなザァッーという音と共に、庭の樹木はあっという間に水煙に霞んでしまった。

そんな光景を寝ぼけ半分で眺めていると、不意にインターホンが鳴った。居留守を決め込んで応答しないでいると、またピンポォーン♪ と鳴る。それでも無視していると、またピンポォーン♪

あんまり催促されるので渋々玄関を開けると、誰もいない。

悪戯か、あるいは諦めて帰ったのか、深くも考えずに居間に戻って外を眺めていると、またインターホンが鳴った。今度は大急ぎでドアを開ける。だが、誰もいない。そのまましばらく玄関で待っていたが、インターホンを押す奴はいなかった。

何だか不思議な気分で居間に戻り、テレビを観ようとソファに座った時だ。まだ電源を入れていないテレビのブラウン管に、スッと横切る人影が映った。テレビの黒いモニターが鏡の役割をして、ちょうどわたしの背後室内をぼんやり写していた。

背後には開けっ放しのドアの向こうに廊下がある。横切った人影は玄関の方から隣の和室に入ったようだった。

家族が帰ってきたのかと思い おかえり! と大声で呼び掛けた。しかし返答はない。

もう一度 おかえりぃっ!と声を張り上げると、返事をするように隣の和室で チィーン・・・と音がした。仏壇の鐘が鳴ったのだ。

お察しの通り、和室には誰もいなかった。そのとき自宅にいたのはわたしだけ。
特別怖い体験ではないが、思い出すと妙に怖くなる話のひとつ。

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怖い話 山寺の坊さん

世の中には霊魂を信じる人がいる。

逆に全く信じていない人も大勢いる。

現代科学の分野でその存在を証明した人は誰もいない。(と、思う)

では人の死後、その霊魂を極楽浄土へ導く仕事の僧侶達は信じているのか?

仏教の開祖・釈尊はその「霊魂」という存在について議論するのを禁じたと言う。それは目に見えない「魂」の存在をあれこれ問題にするよりも、生きている現在を「いかに生きるか」が大切なのだという教えだったのだろう。

ところで、わたしの友人に二人ばかり僧侶を生業にしている奴がいるが、彼等が霊魂の存在を信じているのか気になって訊ねたことがある。

答えは・・・「霊魂は存在するだろう」・・・という返答だった。

山寺での修行中、僧侶たちの多くは変な体験をしたり・見たりするらしい。その体験談もかなり薄気味悪いが、今日は別な話を書くとしよう。

わたしが子供の頃、近くの寺にひとりのお坊さんが住んでいた。子供好きで、話し上手。檀家の誰もがこの坊さんのことを尊敬していた。人相は悪いが、そこにいるだけで「ありがたい」と思えるような坊さんだった。

ある年の夏休みのことだ。近所の友だちと寺の境内で遊んでいると、その坊さんがスイカを御馳走してくれた。坊さんと、わたしと、友だち3人で縁側に座り、蝉の声を聞きながら他愛もない話しをしていた時、友だちのkが「幽霊って本当にいるの?」なんて質問をした。

いるさ。  坊さんはあっさりそう答えた。

そんなものいるハズないと声を張り上げるkとわたしに、坊さんは今夜泊まりに来るよう誘った。

両親に寺に泊まる許可をもらったわたしとkは、わくわくしながら夕飯を食べ、暗くなってから寺を訪ねた。すると坊さんは麦茶を一杯飲ませてくれた後、わたしたちを本堂へ連れて行った。

これから夜の御勤め(読経)をするから、そこに正座して静かにしてなさい。

わたしたちは坊さんの後ろに並んで座り、嫌々ながら読経につき合わされるハメになった。

子供にとってそれは恐ろしく退屈で、足の痺れる苦痛な時間だった。だが悪ふざけをする訳にはいかない。この坊さん、子供好きで優しいが、悪いことをすると容赦なく叱るのだ。それを身にしみて知っていた私達は、黙ってお経が終わるのを待つしかなかった。

読経が始まってしばらく経った時だ。本堂の入り口、つまりわたしとkのすぐ後ろで物音がした。何の音だろうと耳をすましていると、どうも人の足音のように聞こえる。しかも靴の中にたっぷり水を入れたまま歩いているような、グチョッ、グチョッ・・という足音だ。

それから、誰かにジッと見られているような嫌な感覚。思わず背筋がゾッとしてkの方を見ると、彼も同じものを感じたようにわたしを見ていた。

和尚さん・・・助けを求めるようにわたしたちは小声で坊さんを呼んだ。が、坊さんは左手をちょっと揚げてわたしたちを制した。そのまま大人しくしていろ・・・そう合図しているようだった。

読経の間中、その不気味な足音と視線は続いた。これからどうなってしまうんだろう、わたしたちは訳もなく不安になり、半ベソ状態だった。

やがてお経が終わると、正体不明な音も視線も、綺麗に消えた。私達は緊張の糸が切れた勢いで坊さんにしがみついた。

夜、御勤めの読経をしていると、成仏できない仏様がたまにやって来るらしい。今夜来たのは、おそらく3年前に近くの川で身投げした身元不明の女の人。毎年、同じ月日の同じ時間にやって来るのだという。

幽霊がいるかいないかは分からない。信じる人も信じない人もいる。だが、こういう奇妙な体験をしてしまうと、坊さんを続けなくちゃいけないと思うね。

坊さんは静かにそう言った。

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